タイムマシーン

須田雅美

2010/9/2

今回は北條ダンススクールが上野にできてからの60周年記念。
その歴史を描くと言っても、北條社長ですらできた当時はほんの10歳の子供でしたから、全てをご存じであるはずがなく…。
という事で、今回は日本や世界の過去60年の歴史を振り返り、その当時流行した音楽なども楽しんで頂こうと考えました。

タイムマシーン

ショーのタイトルを「タイムマシーン」とし、社長の目の前に突然現れた未来のスタッフと社長の2人はタイムマシーンに乗って時空の旅をする…そんなストーリーに決定。 まずは日本を中心とした歴史年表の本を数冊買い、写真集を見たりしてイメージを作り、5月の連休を使って明先生が30ページに及ぶ台本を書き上げました。

台本と言っても、司会者が場つなぎでMCする為の台本ではありませんよ。 セリフが書かれているんです。 そのセリフを話すのは我らが北條章宏社長!と、女優の神谷れい子さん。 この2人のやりとりで歴史的な事件や社会現象、流行の音楽を紹介してダンサーが踊る…そんなストーリー仕立てのダンスショーとして構成しました。

ショータイム資料の年表

ショータイム資料のポスター

作:北條明

台本

お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、このようなアイデアは私達が昨年、俳優で演出家の井田國彦さんと知り合い、お芝居の舞台に立たせて頂いた事によって生まれたとしか言えません。 っていうか、受けたインスピレーションは忘れちゃう前に使わなきゃ損! 本当は井田さんを紹介して下さったトラストネットワークの小林昭旨さんにお願いして映像も使って…なんて妄想もしていたのですが、残念ながらステージングや予算の都合により実現しませんでした。 井田さんに「劇団所属の女優さんをお借りしたい」と伝えると、神谷れい子さんをご紹介下さいました。 彼女とは「幸せの向こう側」でご一緒させて頂いており、踊れて性格の良い女優さんだと知っていました。 そこで彼女には、ダンスはエキスパートでも芝居はズブの素人である社長のセリフまわしやアクションの指導もして頂き、ストーリーの案内役というとても重要な役割を務めて頂きました。

未来のスタッフ マチルダ約:神谷れい子さん

ストーリーができると今度は音楽を探して編集する作業が始まります。 音楽編集にはセンスが物を言います。 今回は、私達がそのセンスを信頼する勉と聡子が自分のパソコンを駆使し、時には残業をしながら30曲ほどの音楽を編集してくれました。 そして出演のプロの先生方には、こちらの指定の曲に合わせて踊って頂く事になりました。 ほとんどのシーンは明先生が振り付けをしたので、お忙しい中を何度か上野のスタジオに来て頂きました。 北條ダンススクールの中でソロを踊らない子達はエキストラのようにステージ上を歩いたり「HOJO DANCERS」としてフォーメーションを踊ったり、社長やソロを踊る先生と絡んだり…と大活躍。 当日は早替えが何度かあり、大変だったと思います。

HOJO DANCERS

フォーメーションって、経験が浅い頃は「面倒クサイ」と思っていい加減に踊りがち。私個人の経験ですが、自分が主役じゃないという責任の軽さや不満と、みんなで踊るという安心感や甘えなど、色んな感情を持ちながらそれに参加。 チームメイトの成績や年齢がだいたい同じである場合も多く、ほとんどの場合「どうせ箸休め的な作品でしょ、テキトーにやっておこうよ」というネガティブな風がチームの中に吹きがちです。 でも経験を積むと、主催や振付家の立場を少しずつ理解できるようになり、自分自身のパフォーマンスに対する責任を持つようになるので、集団演技の中で自分の最高のパフォーマンスができるようになります。 今回HOJO DANCERSの皆さんには、フォーメーションといっても振り付けが全員同じではないので間違えてもバレないという「安心感」と同時に、1人1人がきちんとパフォーマンスをしないとそのシーンが台無しになりかねないという「緊張感」…という経験をしてもらいました。 でも、忙しい中を休み返上でよく練習してくれたので、全てのシーンが躍動的で見ごたえのあるショータイムを演出する事ができたと思います。 明先生が言っていた事ですが、アカデミー賞やエミー賞に助演男優賞や助演女優賞っていうのが存在するのは、周りを固める人達がいかに大切かって事の証しですもんね。HOJO DANCERSの皆さんは助演ダンサー賞受賞です。

全体リハーサルでご協力感謝のご挨拶

もちろん社長と慶子先生もリハに参加です

セリフとアクションと音楽と照明…お芝居の舞台ならば舞台監督さんがキュー出しをし、現場である舞台を使って場当たり稽古を数回し、ゲネプロと言われる本番さながらのリハーサルを行ないます。 でもホテルのバンケットを使う場合は会場の都合上、前日の夜中もしくは当日の早朝にしかリハーサルができません。 そこでセリフと音楽はつなげて録音をしてしまい、当日は音響の方がCDの再生をONにしたら、どんなハプニングがあっても途中で止めないという方式をとりました。 したがって、出演者にはステージへの出・ハケのタイミングを確実に知ってもらわなくてはなりません。 特にスタッフがまごつく事のないようにと、全体リハーサルの前の水曜日に照明合わせ兼リハーサルをし、金曜日の全体のリハーサルでは他の出演者にも台本と照らし合わせながら、流れと出・ハケを把握して頂きました。ところでタイムマシーンって、誰も実際に見た事があるわけではありませんよね。 映画やアニメに出てくるも物は全てその作者の想像の中の物でしかありません。 ですから今回、ステージには何か形のある物としてのセットを置かず、照明と音だけを使用して演出しました。 舞台ならもっとリアルに色々と作りこめたと思いますが、欲を言ったらキリがありません。

ステージリハーサル

パーティーの1日って始まっちゃうと怒涛のように流れていき、あっという間に終わってしまいます。 「あんなに時間をかけて準備をしたのに…」なんて惜しむ間もありません。 リハーサルはなんと5時半からでしたが、スタッフは4時に集合して控室の準備などをしてからHOJO DANCERSの場当たりをしました。 でもそのおかげで、リハーサルをすんなり時間内に終えることができたのは幸いでした。パフォーマーはどんなに疲れていても最高の演技を披露するのが使命です。 ダンスパーティーではプロとして1人何役もこなさねばならず、それぞれに責任があります。 でも、ショータイムはダンサーとしての力を一番発揮しなくてはならない時間。ショータイムの前に全員集合して、心を一つにしてからステージに向かいました。 普通のショータイムではダンサーが司会者に名前を呼ばれて登場し、お辞儀をして次のダンサーを迎えて…全員が整列しているところに主催が出てきてご挨拶してお開き。 ですが、明先生は「キレイに決まっているのを見た事が無いから、カーテンコールはやらない」と言い出すので、「そらアカン!一応ダンス界の慣例は守らなくちゃマズイよ」と、私はアイデアを絞りだし、ショータイムの最初にキャスト紹介を持ってくる事にしました。 上野駅のホームの発車ベルをショータイムのスタートにし、ガタンゴトンという電車の音をBGMにキャスト紹介をしたのですが、出演63名分の名前を上野から御徒町に到着するまでの時間内ピッタリに「ライブで」読み上げた司会の高坂奈々恵さんは、さすがプロフェッショナルでした!

司会の高坂奈々恵さん

社長は今回のショータイムでほとんど出ずっぱり、しかも最後には自分のソロとしてワルツを踊る設定だったので、毎日朝早くからダンスと演技の練習をし、家に帰っても何度も声を出してセリフの練習をしていました。

明先生監督のもと社長と神谷さんの稽古中

その姿を見ているだけでも感動しましたが、本番の社長はちゃんとセリフを言っているかのように口を動かしながらしっかりと演技をして、慶子先生とのワルツもバッチリ踊り切って下さいました。 そんな社長をステージ袖から見ていて涙が出そうだったのは私だけじゃないと思います。 この笑いあり、感動ありのショータイム「タイムマシーン」の模様はまもなくDVDでご覧頂けることでしょう。 ちなみに、「北條明のタイムマシーン」というかくし芸はYouTubeで今すぐご覧になれますよ。

早朝から練習に励んでました