オールイングランドラテンチャンピオンシップス

北條明&須田雅美

皆様こんにちは。

4月末にあった競技会以降、毎日レッスンと練習でくたばってます。皆さんは筋肉痛になった時どうしてますか?私達はお風呂・ストレッチ・バンテリンの3拍子です。でもロンドンにはバンテリンがないので日本から持って来てます。先日トニー・ドックマンが「膝が痛くて・・・」とバーバラ・マッコールに訴えると、彼女は「タイガーバームがいいわよ。私いつも使ってるの。」というので私も「赤いパッケージの方が効き目が強いよ。」と教えてあげました。タイガーバームはロンドンの薬局でも買えるんです。

速報ではオールイングランドとイングリッシュオープンの結果だけをお伝えしたのですが、どうしても皆さんに「これだけはご報告したい」ことがあるんです。それはですね、オールイングランドのジャッジの中になんと、我らがお師匠様、ドニー・バーンズ・MBE様がいらっしゃったことなのです!!

「だって引退したんでしょ?じゃあ、ジャッジをしたっておかしくないじゃない?」

とおっしゃるあなた!チッチッチ違うんだなぁ、これが。ドニー先生は引退してから一度もロンドンで『プロフェッショナル』のジャッジをしたことがなかったんです。ブラックプールやロンドンインターナショナルなどのビッグタイトルのジャッジを頼まれた事も過去にはあったのですが、なぜか自ら断ってしまっていたんですよ。「ジャッジなんかつまんないよ。競技会を観ていた方が楽しいから、俺はジャッジはやりたくないんだ。」なんて言っていたんです。そのくせ その日の結果に納得がいかないとブツブツ・・・というか大声で文句をいうので、「だったらジャッジとして何が良くて何が悪いのか、世間に知らしめるのが15回も世界チャンピオンをとったあなたの責任でしょ!」とお説教(?)しなくてはなりませんでした。・・・がしかし、どういう風のふきまわしか、オールイングランドのジャッジを・・・ロンドンでの記念すべき初ジャッジをしてくれたのです。拍手ーパチパチパチ。

私は昨年のロンドンインター後のロンドンレポートをお読みいただくとわかるように、ドニー先生に競技会中チェックされている事が大変苦手です。蛇に睨まれたカエルのように「汗たらたら、身体は硬直」になってしまうので、この日も「はぁ・・・ドニーがジャッジなんてプレッシャーだな・・・」と言っていると、明が「硬くなる事なんかないよ。だってジャッジっていったらほんのちょっとしか1つのカップルを見てる時間ないんだよ。」と言うので、「それもそうだ。」と気持ちが和らいだのです。

さて予選が始まりましたが、私達は昨年度のセミファイナリストだったのでシード権があり、1次予選は踊らなくて良いことが当日会場に到着してから判明したので、まずはドニー先生のジャッジ姿を観察することにしました。ジャッジの紹介で「ドニー・バーンズMBE!」と呼ばれるとついつい反射的に「ドニー!」と叫んでしまうのは、長年サポーターとして応援してきたサガでしょうか?ドニー先生はジャッジをしている時に眼鏡をかけます。でもこれはご自分の物ではなく、3年ほど前の彼女兼秘書の置き土産です。かっこわるー(T_T)また、ドニー先生はジャッジをしている時、フロア中よく動き回ります。これは1箇所にジーっと立っているジャッジが多い中では大変珍しい事なのですが、前からも後からもダンスを見て、良ければチェックを入れる・背番号が見えなければ自分が動いて見に行く・・・とても親切なジャッジの仕方だと思います。でも、あまりにあちこち動き回るので、「選手よりもよく動いてたよ」とか、「あんまり動くとお前(ドニー)にチェックを入れちゃうじゃないか」等と、他のジャッジから言われてしまったそうです。それからもう1つ、ドニー先生は大変正直な方です。「バカ」がついてしまうほどの正直さで、しかもすぐに態度や表情に現れてしまいます。ですからこの日も先妻のトーナに「すぐに呆れたり、唖然としたり、笑ったりしちゃだめ!ジャッジなんだから顔に出さないで!」と叱られたそうです。でも、ファイナルソロで裏カウントで踊ってた人に対しては「やってもよーし!」

どうせそんなに見てられないだろうと踊り始めた2次予選目・・・あれ?なんだかドニー先生の視線が気になるなぁ・・・でも気のせいかな?と思いつつ踊り終え、次の予選の準備をしていると、まず奥さんのニコルちゃんが派遣され、ドニーからのアドバイスを伝達に・・・その後先妻のトーナもアドバイスに来て下さり、恐縮しつつも次の予選での目標ができて気持ちが高まってきた所に、なぜかドニー先生登場。そして明&雅美は固まった・・・「あんた ジャッジでしょ?こんなとこに登場していいわけ?普通いけないんじゃない?ねぇ、私達が袖の下渡してると思われたらイヤだから早くここから立ち去ってくれー」と心の中で叫んでいました。でも彼は私達の事が心配で仕方が無かったらしい・・・ワンポイントアドバイスをして立ち去りました。泣かせるねぇ。

結局ファイナルまでドニー先生の視線は私達にク・ギ・ヅ・ケ・・・?競技会を最後まで観ていた横田カップルによると「一曲の4分の3ぐらいずーっと明先生達のことだけを見てましたよ。」だって。確かに、なんだかレッスンを受けてる時のように まん前に立ちはだかられてた気がしたのよね・・・そんなジャッジ過去にいないでしょう。嬉しいような、ちょっと恥かしいような・・・この競技会のもう1つの目玉は「旗揚げ」です。旗揚げとは、全てのジャッジが誰に何位をつけたか観客の前で公表するシステムです。私達はドニー先生がどんなジャッジをするか 大変楽しみにしていました(自分のことは除く・・・)。アマチュアの結果発表を見て、「うーん、さすがドニー先生だ。私達とジャッジの仕方がほとんど同じ!!」と喜んでいました。ドニー先生は順位のボードを上げる時に、「俺は絶対こう思う!」と主張するように、ジャケットのショルダーパッドが上がってアゴについてしまうほど思いっきり高く掲げていました。その姿はカッコ良くも、またまるでだだっ子のようにも見え、その日出場していた日本人選手達に大ウケでした。が、いざ自分達の番になると「ドニー先生、お願いしますよー」という気持ちと「でも、公正なジャッジをお願いします」という気持ちが複雑に入り混じっていました。結果、ドニー先生は私達に1・2・1・2・1と大変高い評価をして下さったのですが、総合の結果は4位に終わりました。私達がドニー先生の生徒だということを知らない観客は「どうしてあの東洋人をドニーは好きなんだろう?」と不思議に思ったことでしょう。いまだに「東洋人=ダンス下手」という先入観で観ている人は結構多いのです。でもいいんです。今回はドニー先生の英国内初ジャッジ競技会と旗揚げを経験できたし、なによりジャッジの立場に立ったドニー先生にダンスを見てもらえたのは大きな収穫でした。・・・その日フラットに帰って早速ドニー先生と反省会と次の作戦を練りました。

ジャッジの判定で”1位”を挙げるドニー先生と明・雅美組
(手前で「1」と書いてあるボードを高く掲げているのがドニー先生で、他の選手より1歩前に出ているのが私達です。)

ドニー先生と北条 明
(全日本チャンピオンいや東洋太平洋チャンピオン(?それはボクシング)として、日本人いや東洋人の意地をブラックプール戦で見せてみせます。)