よっちゃんのぶっちゃけた話
File 26
“ ウルトラE ? モーツァルト?”
2002/11/11
ダンスをやったことのある方ならご存知の方が多いかと思いますが、ダンスには、教科書に載っている
ベーシックのステップと、それを発展させて作るバリエーションとがあります。もちろんベーシックステップだけでも
十分踊れますが、競技会に挑戦している人、デモンストレーションに出演しようと考えている人にとっては、
バリエーションを踊るということが一つの大きな目標になりうるのではないでしょうか。私も学連時代、スタジオ
に通い始めて、初めてバリエーションを付けてもらった時はとても興奮したものです。ステップが複雑なほど、
それを覚えただけなのに急に自分が上手くなった気がしたりして。プロになってもうすぐ8年ぐらいになりますが、
ダンサー及びダンス教師というどちらの立場からも、最近強く感じていることがあるんです。それは見ている人が
踊り手に何を求めているか?ということです。競技会、デモンストレーションの二つの場面で考えてみたいと
思います。
まずは競技会。ここでちょっと体操競技を例に挙げながらお話しますね。体操ではそれぞれの技が難易度別に
D難度、E難度といった具合に分かれていて、難度の高い技ほど、成功した時に多い加算点をもらえます。なので
選手はより高度な技の習得に挑戦しなければなりません。しかしここで忘れてならないのは、どんなに難度の高い
技に挑戦しても、失敗してしまったら加算点をもらうどころか減点されてしまうということです。だから実際の競技
では、成功率が悪ければ難度を下げて演技する選手も少なくないはずです。それは、難度の高い技にこだわるよりも、
少し下げてでも、完成度の高い、質のいい技を見せたほうが高得点につながるかもしれないからです。ダンスの競技会
を体操と比べた時、最も違う点は、複数の選手(カップル)が同時に審査されることですが、ここでちょっと想像してみて
ください。渋谷駅前の交差点のような人ごみの中に、姿勢良く歩いているA君と、つまずいて転んでいるB君がいたとして、
どちらがより多くの人に気づかれると思いますか?私の予想ではB君です。ダンスの競技会においても同じことがいえます。
難しいステップに挑戦して仮に成功したとしても、審査員のうちの何人がそれを見てくれているのでしょうか?逆に、失敗
して大きくバランスを崩したりしたら、チェックをもらえないかもしれません。結論はもう少し後にしましょう。
次にデモンストレーションの場面ではどうでしょうか?ここではピアノの演奏を例にします。私はピアノが弾けませんが、
ピアノ歴20年のCさんに次のような無謀な挑戦を挑みました。‘半年後に、私と同じ曲を演奏してどちらがより多くの
拍手をもらえるか競いましょう!課題曲は分かりやすいところで ♪エリーゼのために。’ 私は半年間がんばって
当日を迎えました。同じピアノで、同じ曲を弾く。勝敗はどちらに?言うまでも無くCさんです。同じ曲を弾いても、音色
が違うのです。音の質が。でも往生際の悪い私はあきらめません。‘もう一度チャンスをください。でも今度は曲は
自由にしましょう。’ 同じ曲では勝負にならないと知った私は、こっそりモーツァルトの曲を半年間練習してなんとか
弾けるようになりました。かたやCさんときたら前回と同じ‘エリーゼのために’を弾くという。さて皆さん、どちらが聴きたい
ですか?そうとう物好きな方で無い限り、やっぱりCさんの‘エリーゼのために’ですよね〜(トホホ・・・)。 これをダンス
のデモンストレーションに置き換えた場合、難しいステップに追われて慌てふためいて踊っている人と、シンプルな
ステップを余裕を持って楽しそうに踊っている人、見ている人はどちらのデモを楽しめるでしょうか?
体操の例からも、ピアノの例からも明らかなように、人が求めているのは、”質”の良さです。質のいいダンス、質のいい音楽、
質のいい機械、質のいいサービス、私たちが出くわす色々な場面において、質の良さが求められています。
誤解してほしくないのですが、難しいことに挑戦することが良くないと言っているわけではありません。一つのことを
習得したら少しレベルを上げていくという繰り返しで、何事も上達していくわけですから。ただ、未完成のウルトラEや、
聴くに耐えないモーツァルトより、完璧なウルトラCや、きれいな音色の‘エリーゼのために’の方が、人々に好まれる
ということも知っておくべきだと思うんです。見た目の派手さで質の悪さをカバーできてると思っているのは、自分だけなのです。
11月に入り寒さも厳しくなってきましたので、皆さん風邪などお引きにならないように!たまには入浴剤でも入れて、
お風呂でゆっくり体を温めてはいかがですか?今年も残りわずか、がんばりましょう!!!
YOSHIAKI