ロンドンインター 2010 その1

須田雅美

今年もロンドンインターナショナルダンス選手権大会を観戦に出かけました。

渡英の直前に、ファイナリストのスラビック・クリクリビーとアナ・メルニコヴァ組がカップル解消、また注目株だったジャスティナス・ダクナスカスとエカテリーナ・ラパエヴァも解消してしまったというニュースを聞き、「あぁ、楽しみが2つも減っちゃったな…」とガッカリして出発しました。

10月18日(月)三井・杉本組にヒースローでピックアップしてもらう予定でしたが、彼らは初留学なのでヒースローまでたどりつけるか心配でした。到着ロビーに出ると、ちゃんと2人が迎えに来てくれていたので思わず「お〜!無事生きてたかっ!!」と抱きしめてしまいました。

<三井君と朋子…そして向こうに見えるのは明先生>

不覚にも飛行機内で風邪をひいてしまった私は、ブレントウッドで行われたライジングスター選手権と、チャンピオンシップ(本戦)の予選を応援に行けず…密偵のみつどん(三井君)が会場から逐一連絡をくれました。

前の週に行われたJBDF選手権で2位だった金光組がなんと2予選で敗退してし、そのうえ今度こそライジングスターのファイナル入り!と期待がかかっていた織田組も準決勝敗退となってしまったという報告をうけ、「む…無念じゃ」と思いがひろがりました。

その後、織田組は本戦の予選も突破できず…というニュースを聞き、JBDFのラテンのレベルを世界標準で測ると3流?と言われても仕方がないような結果だよ…どうしたらいいんだろう?と、なんだか憂鬱な気持ちになっちゃいました。金光組は本戦の予選出場をとりやめたと聞き、理由があるにせよそれじゃロンドンに来た意味がないじゃん!と、なんだかガッカリさせられました。

まぁ、そんな彼らのフォローをするとすれば、今年の競技会スケジュールに問題があったかもしれません。

今年のロンドンインターナショナルの開催はライジングスター選手権と本戦の予選が10月19日(火)20日(水)、ロイヤルアルバートホールでの本戦が21日(木)でした。それに対してJBDF選手権が10月16日(土)17日(日)に名古屋で行われ、17日(日)には統一全日本10ダンス選手権も行われていたそうです(JBDFの全日本10ダンスは10月3日でした)。

このスケジュールでは、外国の競技会で活躍しようとする日本人選手たちが全くの準備不足になるのは目に見えています。外国へ行くには稼ぐために働かねばならず、しかも日本での競技会は大切にしなくてはならない…。そんなこんなで、今年は日本人(特にJBDFの)選手達にとってはアンラッキーな年だったと言うべきかもしれません。

自分がもしも現役の日本チャンピオンだったらどうしただろう?迷わず「JBDF選手権に出場しても世界選手権への日本代表になれるわけではないから、出場しないでロンドンインターの準備の為に渡英する」と言いたいところです。

ところが、例えば今年の開催地であった名古屋は私の地元…お世話になった先生方や家族に自分の成長を見てもらうチャンスを逃すわけには行かなかったでしょう。もしも地元でなかったとしても、選手権への出場を蹴飛ばしてまでJBDFのチャンピオンとしてロンドンで良い成績を取ったところで、帰国後お偉方に嫌味を言われ、その後の競技会で落とされるのは目に見えています。実は私達、そんな事を一度経験しているのです。ですから今回のケースでは、きっとJBDF選手権の前に留学して、いったん帰国して出場し、翌日ロンドンへとんぼ返りしていた事でしょう。

こういう日程で、どこでもいつでもベストのダンスを踊るには相当の体力と経験が必要です。ヨーロッパの選手を見ているとこんなのは日常茶飯事。レッスンでさえ日帰りでEU間を行き来しています。

でも日本からロンドンまでは11時間の飛行時間、時差が9時間…これだけでも体への負担は大きいものです。それはコンペモードONにしていると麻痺して感じられないことも多いのですが、パフォーマンスにひびかないとは言い切れません。

しかもロンドンインターは、ライジングスター選手権がひと通り終了すると2時間以上のインターバルがあり、その後アルバートホールへの出場選考予選になるので、ライジング入賞を目指す選手にとっては1日のうちに2回も全日本級の大事なコンペに出場するような感じです。優勝するつもりでライジングスターを踊り切り、その結果が良かろうと悪かろうと全てを一旦リセットして、またもやトップを目指して踊るって結構大変だったと記憶します。

ライジングスターと本選の選考会ではジャッジが違うとはいえ、前年度本戦でベスト30に残ったダンサーや、ライジングスターを卒業したり、ライジングスターなんか目もくれずに本選での成功だけを狙っている自信満々のダンサー達と一緒に競い合うことになる…つまり、もっと狭き門になるのです。

ロイヤルアルバートホールという世界的に有名なホールで踊る権利を得た選手達は「世界で勝負するスタートラインに立った」と感じるかもしれません。そしてコンスタントにアルバートホールで踊れるようになる事で「世界的に活躍できるダンサーである」というプライドを持ち、そのプライドを保つためにさらに努力をし続けるんじゃないかと思います。

少なくとも自分達はそうだったな…。