高価な買い物に求める価値

須田雅美

2008/6/5

5月19日月曜日、ブラックプールシーズンにしては随分遅くロンドン入りしました。
いつものように税関を通る前にしっかり腹ごしらえ。
今回は初めてラーメンを食べました。
でも明先生はラウンジで更にソーセージパニーニを注文、私もヨーグルトを食べて機内へ。 

一眠りするとまずはランチだかディナーの時間。
いつも私は「今日は何かな~?」と淡い期待を抱きながら食べてしまう…が、その期待はいつも脆く崩れ去る。
分かっているのに毎回繰り返してます。
食欲っていうのは本能的な欲求だから、学習できないんでしょうか?
機内ではその後アフタヌーンティー(軽食)と朝食が提供されるのですが、
これは目覚めていないと与えられない場合が多いので、いらない時には寝たふりをする事もあります。
今回は機内でよ〜く眠れたので目が覚めるともう少しで朝食という時間でした。
「お腹すいたな〜」と思いながら映画を観ていましたが、通りかかるキャビンアテンダントは私に何も聞いてこない。
そのうちに明先生がちょっと目を覚ましたみたい。
するとそこへ通りがかった外国人の男性のアテンダントが「ご朝食は召し上がりますか?」と聞いている。
明先生は眠いし、いつも食べないので「いらない」とそっけなく答えていました。
立ち去るアテンダント…「ねえ、私には聞かないわけ?」とプツッときた。でも言わないよ~だ。 

実は乗ってすぐ、アテンダントのチーフっぽい人が「須田様、いつもご利用ありがとうございます。」と挨拶に来て、 「サービスなどについてお気づきの点がございましたら何なりとご指摘下さい。」と私に言ったのです。
以前機内でアンケートに答えた事があったので、今回もそれかな?と思い、
「アンケートにクレームは書こう」と思いながら勝手に覆面調査員となり、持参していたパンをかじっていました。
その後、隣の人が起き、明先生が再び起きて、また同じ外国人の男性アテンダントは私の両サイドの男性に「ご朝食は?」と聞いていた。
他のアテンダントも忙しそうに朝食を運んだり、シートをベッドから椅子になおすのを手伝っているが、
自分の持ち場以外には目を配らないんでしょうね。
結局、「まもなく着陸準備に入ります」のアナウンスまで私は誰からも声をかけられなかった。

ま、自分で「私にも朝食をくれ!」と言えばいいんだし、
作り笑顔で「ご朝食はいかがですか?」なんて聞かれてくすぐったい思いをするような面倒が無くていいんだけど、 覆面調査員と化した私は、つい彼らの実力(?)を試してしまった。
でも、肝心のアンケート用紙が来ない。 これじゃあ少々イラつきながら彼らを観察していた気が晴れない。
ついに通りがかったアテンダントにアンケート用紙があるのかと聞くと、
確認に行って「今日の分の用紙が終わってしまったので、私がうかがいます」という。

「じゃ、言わせてもらうとさあ…」とは言わなかったですよ、でもサービスにバラつきがある事を指摘。
特に外国人の男性アテンダントは男性客にだけ親切な傾向があるって事もね(←どういう事か察しはつきますよね?)。
するとそのアテンダントがチーフに報告したのか、すぐにチーフが飛んできた。
「いつもご利用頂いているのに、申し訳ございませんでした。 降りたらすぐに召し上がれるようにサンドイッチをお包みしましょうか。」と謝ってくれたけど、
「別に頼む事はできたけど、あなた達のサービスを報告して欲しいというから最後までどうなるか待ってみただけ。 今はお腹も減ってないし、別に怒ってもいないですよ。」と話すと
「それでも、サービスがゆき渡らなかったせいで、 須田様をそんな状況にしてしまった事をお詫びしたい。 お酒を召し上がるようでしたら、何かお好きなものをお持ちしますが…もしくは免税品の中から何か…」というけど、
「私はお酒も飲まないし、欲しい物も無いし、しかもそんなにお気遣い頂かなくても結構ですよ」というのに、 「ではマイルはいかがでしょう?」おっ!それならいいなぁ…とは思ったけど、メンバーズカードの番号を告げるのが面倒だ… 「ほんと、結構です」というのに「ではシャンペンなどはいかがですか?」つい顔がほころんで「いいですねぇ」と答えてしまった。
さっきお酒は飲まないって言ったばかりなのに!チーフは交渉に勝ったかのような嬉しそうな顔で立ち去り、
しばらくすると「実はシャンパンを切らしておりまして、スパークリングワインなんですが…」
チックショーいっぱい食わされた!!という気持ちになったけど、
もう面倒だ…どうせ明先生が誰か人を呼んだ時に飲むだろう。と、ありがたく受け取る事にした。

外国ではサービスとは買うものだ。日本ではまだ、無償で受けるものという意識が強い。
日本人の意識では、サービスをするというと「安売りする、おまけする」みたいな感じに聞こえるが、
英語のserviceには「勤務する、仕える」「役に立つ、接客する」「機械などの点検、修理」「官公庁業務」
「兵役」「礼拝」など、 たくさんの意味が英和辞書に載っています。

実際にはあの大きな飛行機を日本からロンドンまで飛ばすのに、一回の費用がいくらなのか分からないけど、
私にとって航空運賃は、日常のものと比較すると高価な買い物に値する。
アッパークラスとなればそのクラスの乗客数に対してのアテンダントの数が他のクラスと比較すると多いので、
その分「サービス」をする為に存在するという定義になる。
もちろん座席や食事も良い物が提供されているし、パジャマまで支給されるけど、
アテンダントのサービスも受ける為にもお金を払っているのだから、
アテンダントにはそれなりにきちんと仕事をしてもらいたいと思うのは悪い事ではないと思います。
でも、この「それなりの」っていうのは、受け手の側によっても違うし、
航空会社によっても指導されたサービスの基準が違うから量るのが難しい。
旅慣れたセレブの話では、あるイタリアの航空会社ではまるで「セルフサービス」が当たり前のような扱いを受け、 ある日本の航空会社はサービス過剰すぎて逆に気分がおかしくなるらしい…。

日本語ではサービスという言葉の意味まで変換されて定着してしまったみたい。
郷に入れば郷に従えという言葉は、「サービス」という言葉の意味にまで影響しているようです。
皆さんも外国へ行く機会があったら、ちょっと比較してみて下さい。興味深い研究内容だと思いますよ。

では今日はこの辺で失礼します。